「ニート(2)」

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  日本版 「ニート」の実像

 イギリスだけではなく日本で も、働きも学びもしない「ニート」が多数存在する。 そしてその数は急速に増えている。しかし、日本ではニートとなっている若者の姿や表情が、具体的にみ えてこない。

 2003年、厚生労働省は、民 間の研究機関であるUFJ総合研究所に委託して、「若年 者のキャリア支援に係る調査研究」という調査をした。 そのなかで行われた職業生活の実態調査がある。 その結果から、日本版「ニート」の実像に迫ってみ る。

この調査は、2003年の2月 から3月にかけて、18歳以上35歳未満で、現在無職の人々に対し、その生活、意識、経歴などを、インターネットを使ってたずねたものだ。 日本では働く 状況についての調査はたくさんあるが、仕事をしていない無職の若者に集中してつぶさに実施したのは、めずらしい。 調査対象には、主婦や学生のほか、パー トやアルバイトなどをしているフリーターは含まれない。 純粋に収入を得る活動をしていない無職者だけが、対象だ。

調査に回答を寄せた約1200 人の無職独身者のうち、休職活動中もしくは独立・開業準備をしている人々を、ここでは「失業者」と呼ぶ。 一方、進学準備も休職活動もしておらず、ケガや 病気で療養・休養中のわけでもなく、「特になにもしていない」と答えた人々を、これから「ニート」と呼ぶ事にする。

イギリスでは、生活保護、病 気、不登校、失業などを含め、教育も、就業も、訓練も受けていない状況にある16歳から18歳の人々を、すべてニートとしていた。それに対して、ここでみ ようとするニートには、職につこうとして活動している失業者や、仕事につきたくても病気やケガでつけないために無職となっている人は、含まない。

失業者、ニート、およびそれ意 外の「その他」の割合を表2に示した。 表からは、無職全体のうち、およそ45パーセントが失業者、14パーセントとがニートになって いる。男女の割合として特徴的なのは、ニートでは男性と女性がほぼ半々になっていることだ。 失業者、そしてニートでも失業者でもない「その他」では、ど ちらかというと女性のほうが多い。

親といっしょに暮らしているか どうかをみると、失業者、ニート、その他のいずれをみても、4人のうち3人以上が、親と同居している。 どんな無業者でも、生活が苦しいこともあって、同 居している確率はきわめて高い。 そのかなでニートは、相対的に親との同居率は、意外に低い。 ニートの4人に1人は、親と同居せずに一人で生活してい る。

図2は、ニートと失業者の最終 学歴を描いたものだ。 ニートでは、最終学歴が中学卒もしくは高校中退だという場合が、きわめて多い。失業者では中学卒および高校中退が一割に満たないの に比べて、ニートの場合、中学卒、高校中退がおよそ2割にも達している。別に行ったくわしい統計分析からも中学卒や高校中退は、あきらかにニートになりや すいことが確認できる。

失業者の学歴で一番多いのは、 およそ3人に1人となっている大学卒だ。 ニートで一番多いのは高校卒だが、それでも5人に1人は大学卒となっている。 ニートに中学卒や高校中退がなり やすいのは事実だが、だからといって大学を出れば、ニートに絶対ならないとは、かならずしもいえないのもまた現実なのだ。